HHKBに鉄板を入れてみる(改造)

ちまたでは,HHKBが人気を博しているようです.たしかに,極めて合理的で美しい配列であることは,あの和田研フォントなどで知られる和田英一さんの『けん盤配列にも大いなる関心を』[1]を読めばよくわかります.なんといっても,小さくてかっこよい.この魔力によって,気付いたら手元に2009年製のHHKB Professional 2がありました.

さっそくちょっと打ってみます.HHKB Professionalやその後継機などは,東プレの静電容量無接点スイッチで打ち心地もお墨付き…あれ,なんか違う,気がする.たしかにこの独特の打ち心地はRealforceでおなじみ東プレの静電容量無接点スイッチです.もちろん,たいへん打ちやすいのですが,安定感に欠けるような…気がする.Realforceに比べるとちょっと音が軽い…気もする.

なお,同様の改造はざっと調べた限り,少なくとも日本語インターネットでは無いようでした.なにかしらの役に立てば幸いです.

分解

さて,時間があったので,キートップなど清掃するついでに分解してみました.

それなりに汚れている

キートップを取った図です.お気づきとは思いますが,軸(ハウジング)がケースと一体型(!)で鉄板がどこにも入っていない(!!)のです.もちろん,こんなことは詳しい方はとっくにご存じだったろうと思うのですが.それなりに値段のするキーボードには鉄板が不可欠と思っていたので,これは驚きました.その経緯は『Happy Hacking Keyboardイベント開催で開発秘話から裏話まで連発!』[2]にあります.鉄板を入れると重くなり,かつ,幅が5mmほど大きくなってしまい,それが許容できないから,入れなかった,ということです.そこで,ちょっとした時間があったので,鉄板を入れてみることにしました.

構想

鉄板を再塗装したRealforce

上のRealforceのように,押し込んだらキーキャップが鉄板に触れるくらいの位置に鉄板があるのが理想ですが,そうなると,軸(ハウジング)をもこちらで用意せねばならず,これはなかなか難しそうです.そこで,基板の下に入れることにしました.そうすれば,既存の(純正の)ネジでも止められるはずです.また,可逆改造と出来そうです.

これでも,意味はあるはずです.というのも,大変打っていて心地の良いUNICOMP Endura Pro(要は旧IBM Model M)も,プラスチックの下に鉄板が入っているという構造のためです.これならば,ガラスエポキシ基板(だと思う)の下に鉄板を引いても良いでしょう.

買い出し

ここまで散々「鉄板」と書いてきましたが,コメリまで自転車を飛ばしてわかったのは,1mmくらいで,ちょうどよいくらいの金属板はアルミ,ステンレス,銅のものしか売っていないということでした.もちろん,鉄である必要は無いので,比重の大きさ(=重さ,SUS430の比重は7.7くらい)と加工のしにくさ(=しなりにくさ等)がちょうど良いステンレス板を買ってきました.銅はやわく,アルミは軽いのです.1*100*300で700円くらい.ちなみに,この1mmという値はRealforceにこのくらいの厚みの鉄板が入っているらしいというところからです.[2]

加工

厚紙で大体作ってあててみます.

便利な工具がないので電動ドリルドライバー・百均のニッパー・棒ヤスリで頑張りました.

基板の下にぴったり取り付けるので,部品やコネクタなど出っ張っている部分が干渉しないように,適当な厚紙でおおよその感じを作ってみます.だいたい良さそうなので,板にうつし,切り,ネジ穴などを開けます.その後,紙やすりで下地を出し,アクリルスプレーで塗装しておきます.せっかちなもので,厚塗りしすぎた&早く取り込みすぎたのでムラが出ましたが,まあ良いでしょう.適切な保護具の着用を忘れずに!

清掃

洗い上がり,今回は6時間ほどワイドハイターと日光浴もしてもらいました(曇りだった).

そうそう,どっちがついでかわからなくなっていますが,元々の目的は清掃でした.これは,n番煎じなので,軽く書いておきます.まず,キートップ・プランジャを外して,洗剤で洗って,乾かしておきます.これを組み付けて,必要なところにグリスをあげるだけです.

組み立て

なんとかなった雰囲気なので,組み付けてみます.案の定,なんとかなっていない(干渉する部分がある)ので,良い感じに削って取り付けます.やっぱり手加工は精度が出ない(ということにしてください).ちなみに,基板側には(一応塗膜はありますが)絶縁のためにOPPテープを貼ってあります.

あとは戻すだけです.1mm厚のステンレス板を入れましたが,足の部分はくりぬいたので特に問題なく閉まりました.

完成!

所感

まず,打ち心地について,これは底に感じるポコポコ感が少なくなったように思います.また,(そういう改造でないので当たり前ですが)キーストロークも変わらずです.音は,キーを打ち付ける先が変わらないからか,あまり変化が無い(言われてみればちょっと安っぽいかも)様子です.何よりも,重さが良いです.ちゃんと机の上にとどまってくれます.これを製造している(であろう)東プレの本業は金属プレスなので,こんな簡単な金属板加工は,お茶の子さいさいと思います.持ち運ぶニーズがあるのはわかりますが,この配列が好き,という人にぜひ鉄板入りモデルを発売してほしいものです.その際は,ぜひRealforceのようにキートップを鉄板に打ち付ける構造で.

じつは,そもそも静電容量無接点スイッチのHHKBを打つのはこれが初めてなのですが,なかなか良いですね.DeleteとFnの位置が最初気になりましたが,Deleteを小指で押すようにして(一般的な配列では薬指を使っている),かつ,左altをFnにしたらじつに快適です.この稿もまさに改造したHHKBで書いています.

重さについて

これを見ている人は気になることだと思うので,参考までに書いておきます.

加工が終わって,OPPテープを貼ったステンレス板の重さです.192g.

組み上げた後の重さです.コードなしで704.5g.ちなみに,公式の仕様では530gとなっています[3].これはちょっと古い個体なので様々劣化などの具合でちょっと軽かったようですね.

参考文献

  1. 『けん盤配列にも大いなる関心を』.和田英一.Feb 1992.PFU Technical Review.https://www.pfu.fujitsu.com/hhkeyboard/pfutechreview/
  2. postscript版は,今では,Ghostscriptに同梱されているps2pdfを使うとpdfとして読むことが出来ます.(いまどき,なかなかpsをサポートしているソフトはありませんよね)
  3. 『Happy Hacking Keyboardイベント開催で開発秘話から裏話まで連発!』.柳谷智宣.Oct 2017.ASCII.jp.https://ascii.jp/elem/000/001/560/1560776/3/
  4. 『HHKB Professional2 仕様』.PFU.https://www.pfu.fujitsu.com/hhkeyboard/hhkbpro2/spec.html

あくまで素人がいろいろやってみた,という記録です.2022/02/19公開.

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